sisouron

都市を多面的に観察したい

台風明けの日

 数十年に一度という規模の台風が一晩中家の窓ガラスを叩きつける中で息を潜めた昨晩。朝になって台風が過ぎ去ったのを知り外に出る。

 台風明けの日は昨晩の嵐がまるで夢だったかのような晴天で10月とは思えない猛暑であった。しかし空を見上げると肉眼を通してでも雲の流れの早さは明らかであり、それは台風の余韻を感じさせた。

 わたしは先日の台風である一つのことを発見した。台風明けの朝は街の空気が、においが変わるということである。

 港町の駅のホームのにおいが都心の張りつめたにおいよりもずっと穏やかで多様性と濃厚さを含んでいるように。台風明けの朝はいつもとは違う街のにおいがするのである。

 台風はきっと遠く、わたしの知らない街の空気を運んでくるのだろう。そしてそのことはわたしたちが今まで呼吸をしていたことを思い出させる。

 わたしが思いきり呼吸をすると、わたしの胸の中にわたしの知らない街の空気が取り込まれる。そしてまたわたしは当たり前のように呼吸を忘れるのである。